Humboldt-Universität zu Berlin - Kultur-, Sozial- und Bildungswissenschaftliche Fakultät - Institut für Asien- und Afrikawissenschaften

 

三重県北部にある鈴鹿市は、人口約万人を抱える都市だ。ドイツでは鈴鹿サーキットにおいて開催される「日本グランプリ」の街としてよく知られている。しかし、鈴鹿はレースだけの街ではない。ここには詩人であり森鷗外の友人でもある佐佐木信綱の記念館があり、多くの伝統工芸も息づいている。

Abb.:Shinseidô Co.,Ltd.
こうした伝統工芸の代表が鈴鹿墨だ。墨匠、伊藤亀堂も自身の工房「進誠堂」を鈴鹿に構える。進誠堂は日本でも数少ない伝統的な墨工房のひとつで、ここでは職人が書道や墨絵に用いられる墨を手間ひまかけて作る。選び抜かれた材料で作られた墨はまるで至宝のようだが、書道家が研ぎすまされた状態で墨をすり、筆にふくませる時、墨はその姿を消し、新たな芸術へと形を変える。これが墨道だ。

ドイツにおいては中国や日本の書道に興味を持つ人が増えている。けれども、書道に欠かせない墨についてはほとんど知られていない。

墨には使用用途によって様々な種類があるが、基本は膠、煤、香料でできている。たいていの墨は黒だが、中には色のついたものもある。

本特別展においては日本の伝統工芸の舞台裏に焦点を当てた。それ自体が高度な

Abb.:Shinseidô Co.,Ltd.
芸術である墨の製造過程だけでなく、食品、衣服、建物、香料、役者用の化粧品といった墨の多様な使用方法についてもご紹介する。

日本最古の墨は奈良県にある正倉院に保管されている。この正倉院は、鈴鹿墨展とベルリン森鷗外記念館の接点だ。それというのも、鷗外は年から亡くなる年までの間、この正倉院を含む帝室博物館の総長を務めていたのだ。また、鷗外の作品も墨、硯、筆、紙という当時の知識人階級であった作家にとっての神器なしには考えられない。こうした意味でも、墨は鷗外と無関係ではない。

この展示の始まりは、キュレーター、ベアーテ•ヴォンデが年に三重大学において学術研究の目的で滞在したことがきっかけだ。ひょんなことから墨匠と知り合う機会を得て、この出会いが年の講演『文学と墨』、そして本展へとつながった。

本展の開催は進誠堂の皆さん、土屋邦恵氏、小川眞里子名誉教授、鈴鹿市の協力なしには成立しえなかった。この場を借りて心から感謝申し上げたい。

Video Suzukazumi ANA

 

MOG HP
https://www.iaaw.hu-berlin.de/de/region/ostasien/seminar/mori/aktuelles/suzukazumi


展示会特別ツアー:2019 年 8 月 8 日(木)13 時〜